ああ、お美味しい!

 昨日から重湯を食べ始めた。やっと少し食べれる様になって元気も出て来たようだ。夕食の後に錠剤のミン剤をもらったらしくて、9時頃にはテレビを見ながらもう眠たそうな表情でうっすらと目を開けている。
9時半頃にはもう眠る、と言うので麦茶を飲ませた。まだどれぐらいの量がいいのか良く解らない。けれど人口肛門に成っているから食べたり、飲んだりしたらすぐに出て来る。
 なので、小腸の方の袋は大きな袋に替えられていた。

 テレビは子守唄代わりに音量を小さくして電気を消した。もう満足したように眠っている。
僕はその病室の洗面台の明かりを付け、しばらく本を読んでいた。
今、読んでいるのが村上春樹の「1Q84
 少し流行からはズレているが、今年の正月にひなたと本を買いに行って、たまには小説もと、買って来て暫く時間も無くそのままに成っていた。
 ところがこの木金休みに成った為に自分の時間が出来て少しづつ読み始めた。
最近は病院も暫く大変で読む気にもなれなかったが、今少し気持ちの余裕も出来た。今2巻目がもうすぐ終わろうとしている。これは面白い。次へ次へと引き込まれて行く。次は3巻を買って来よう。

 11時過ぎまで読んで僕も眠ろうとしたが、雄一は目を開けて「何か飲みたい」
麦茶をまた少し飲ませて眠った。
 この後も眠りは浅いようだが、気持ちは落ち着いている様で目を閉じている。
2時頃には見回りに来た看護婦さんにせがんでお茶を飲んでいる。
僕を起こすのが悪い、と思っているのかな。

 その後、いつもの様に4時頃には看護婦さん2人で色々回収や計量に来る。
今度もお茶を飲んで看護婦さんの仕事が終わるとまた浅い眠りに入った。
僕はその後、眠る気にもなれずまた洗面所で本を読んでいた。

 6:30
 少し眠って外は明るく日差しが入ってくる。雄一はテーブルの上にあるカルピスメロン味の小さいペットボトルを見て
「それが、飲みたい」。「ダメ!これはオレの!」。「飲みたい!」。「うるさいなあ、もう!」。と仕方無く少しだけコップに入れて飲ませた。
 「ああ、美味しい!」。と久し振りに雄一の顔から笑顔が見れた。

 看護婦さんが来ても「ご飯、まだ?」。と何度も聞く。看護婦さんも呆れて笑っている。
7時半頃にはキンコンキンコンと電動車の音がして食事が運ばれて来た。

待ちに待った朝食! メニューは重湯と味噌汁、それに牛乳パック。
雄一はこんな味気ないメニューでも「美味しい」。と言いながら本当に美味しそうに、嬉しそうに食べていた。
食べ終えて、まだ冷たい牛乳パックも開けて飲み始める。
 もう無くなりかけてもパックの向きを変えたり押しつぶしたり、最後の一滴まで飲みほしていた。

 「おまえ、感謝しないとダメだぞ」。
雄一も身にしみて解っただろう。
また一つ、少し小さな山は越えた様だ。
けれどまだまだこれからだ。

 今週は9月最後の木金休みに成る。子供達との夕方からの練習も予定している。僕の体もこれで元に戻る。日曜の試合も凄く楽しみだ。